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企画書・提案書の作成代行を頼む前に|契約の形と、できあがった資料の権利

提案書の作成が追いつかない。営業担当は商談に出ているのに、提出物の準備で手が止まる。営業部門を持ちながら思うように数字が伸びない会社で、よく起きていることです。

打ち手として「企画書作成代行」「提案書の作成代行」を探すのは自然な流れです。ただ、外注先を比べる前に決めておいたほうがよいことが四つあります。契約の形、渡す情報の範囲、できあがった提案書の権利、そして発注する側に生じる義務です。いずれも後から直すのが難しく、ここを曖昧にしたまま頼むと、安く上げたつもりが結局社内で作り直すことになります。

1. 外注の契約には二つの形がある

請負(民法第632条)は仕事を完成させる義務があり報酬は結果に対して払う。準委任(第656条)は完成が要件ではなく、善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務(第644条)を負う。請負は不適合を知った時から1年以内の通知が必要(第637条第1項)。

業務委託と一口に言いますが、民法上は性質の違う二つの契約が入っています。

請負は、民法第632条が「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」と定めています。仕事を完成させる義務があり、報酬は結果に対して払われます。

準委任は、民法第656条が「この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する」と定め、委任の規定を借りる形になっています。受託者が負うのは第644条の「善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務」で、条文上「完成」は要件になっていません。報酬についても第648条第3項が、委任が中途で終了した場合などに「既にした履行の割合に応じて」請求できると定めています。

提案書の作成で言えば、「このフォーマットで、この案件向けに一式を仕上げる」なら請負に近く、「週に何時間か入って、営業の提案準備を手伝う」なら準委任に近い形です。どちらが良いという話ではなく、完成責任を相手に持たせるのか、時間と手の動きを買うのかを先に決めておく、ということです。

請負を選んだ場合、仕上がりが契約の内容に合っていなければ修補などを求められますが、期限があります。民法第637条第1項は、注文者が不適合を知った時から一年以内に通知しないと、追完の請求も報酬の減額も損害賠償も契約の解除もできなくなると定めています(請負人が知っていた、または重大な過失で知らなかった場合を除く)。受け取って検収して終わり、ではなく、気づいた時点で伝える習慣が要ります。

2. 渡した情報の質が、責任の所在を決める

民法第636条。注文者が供した材料の性質または注文者が与えた指図によって生じた不適合を理由として、注文者は追完の請求・報酬の減額・損害賠償・契約の解除をすることができない。

外注した提案書の出来が悪かったとき、原因が相手の力量なのか、渡した情報の不足なのかは、感覚で切り分けられるものではありません。民法はここに線を引いています。

第636条は、請負人が契約の内容に適合しない目的物を引き渡したときでも、注文者が供した材料の性質または注文者が与えた指図によって生じた不適合を理由としては、追完の請求も報酬の減額も損害賠償も解除もできないと定めています(請負人がその材料や指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは別です)。

つまり、こちらが渡した情報や指示が原因で提案書がずれたなら、それは外注先の責任にはなりません。「うちの商品の強みが伝わっていない」と感じたとき、その強みを言語化して渡していたかどうかが問われます。外注を使って成果が出ない会社の多くは、外注先の選び方ではなく、この渡す情報の設計でつまずいています。

3. できあがった提案書の権利は、自動では自社に来ない

著作権法の三つの関門。第15条第1項の職務著作は「業務に従事する者」が対象で外注には効かない。第61条第2項により第27条・第28条を特掲しないと作り替えの権利が残る。第59条により著作者人格権は譲渡できない。

ここが最も見落とされます。

社員が作った資料なら、著作権法第15条第1項の職務著作の規定で、要件を満たせば会社が著作者になります。ただしこの条文が対象としているのは「その法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物」です。外部の事業者に委託して作らせたものは、この条文では自社の著作物になりません。文化庁の「著作権テキスト 令和7年度版」も、職務著作の要件として「法人等の業務に従事する者が創作していること」を挙げています。

では契約で譲り受ければよいかというと、それだけでは足りない場合があります。著作権法第61条第2項は、著作権を譲渡する契約において第27条(翻訳権、翻案権等)または第28条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定すると定めています。

営業の現場で何が起きるかというと、「去年作ってもらった提案書をベースに、別の客先向けに作り替える」ができなくなります。作り替えは翻案にあたるからです。文化庁の「誰でもできる著作権契約マニュアル」も、二次的著作物に関する権利を含めて全部を譲渡する場合には「著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む」と明記する必要がある、と説明しています。

さらに、第59条は「著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない」と定めています。著作権を譲り受けても、同一性保持権は作った側に残ります。同マニュアルは、著作者人格権を行使しない旨を契約に入れる例があることにも触れつつ、その場合は著作者が改変や氏名の非表示に異議を述べられなくなるため注意が必要だと注記しています。

外注の見積書を比べる前に、契約書に次の一文があるかを見てください。「著作権法第27条および第28条に規定する権利を含む、すべての著作権を譲渡する」。この一行の有無が、その提案書を資産にできるかどうかを分けます。

4. 発注する側に義務が生じる場合がある

親事業者は委託事業者、下請事業者は中小受託事業者、下請代金は製造委託等代金に変更。3条書面は第4条、支払期日は第2条の2から第3条、遅延利息は第4条の2から第6条、書類の保存は第5条から第7条へ。

ここは2026年に前提が変わりました。長く「下請法」と呼ばれてきた法律は、2026年1月1日から題名が「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に変わり、「中小受託取引適正化法」、通称「取適法」と呼ばれています(令和7年法律第41号)。用語も変わり、親事業者は「委託事業者」、下請事業者は「中小受託事業者」、下請代金は「製造委託等代金」になりました。

企画書・提案書の作成委託は、取適法第2条第3項の「情報成果物作成委託」の対象になり得ます。情報成果物には「文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの」が含まれており、企画書や提案書はこの形態に当たります。

適用の有無は資本金と従業員数で決まります。プログラム以外の情報成果物の作成委託では、次のとおりです。

委託する側委託される側
資本金5千万円超資本金5千万円以下(個人を含む)
資本金1千万円超5千万円以下資本金1千万円以下(個人を含む)
常時使用する従業員100人超常時使用する従業員100人以下(個人を含む)
プログラム以外の情報成果物の作成委託では、資本金5千万円超から5千万円以下へ、資本金1千万円超5千万円以下から1千万円以下へ、常時使用する従業員100人超から100人以下への委託が対象。従業員基準は2026年の改正で新設。

従業員数の基準は今回の改正で新しく入ったものです。資本金1千万円以下の会社でも、従業員が100人を超えていれば委託事業者として義務を負う側になり得ます。

ただし、自社の営業で使う提案書を外注するケースは、いわゆる自家使用にあたります。公正取引委員会のQ&Aは、自社の宣伝用ホームページのように自家使用の情報成果物について、自社で業として作成しておらず作成能力もない部分の外注は情報成果物作成委託に該当しない、という考え方を示しています(Q43)。一方、提案書や企画書そのものを顧客に納めている事業者が外注する場合は対象になり得ます。自社がどちらかで結論が変わる論点なので、迷う場合は公正取引委員会に確認してください。

対象になる場合、委託する側には四つの義務があります。

  • 発注内容等の明示義務(第4条) 発注時に「直ちに」、給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法などを書面または電磁的方法で明示する
  • 支払期日を定める義務(第3条) 受領した日から起算して60日以内で、かつできる限り短い期間で定める
  • 書類の作成・保存義務(第7条) 2年間保存する
  • 遅延利息の支払義務(第6条) 支払が遅れた場合、受領日から60日を経過した日から年率14.6%
第4条の発注内容等の明示(発注時に直ちに書面または電磁的方法で明示)、第3条の支払期日(受領日から60日以内)、第7条の書類の作成・保存(2年間)、第6条の遅延利息(60日経過後から年率14.6%)。

第5条の禁止行為には、買いたたきや支払遅延のほか、不当な給付内容の変更・やり直しと、協議に応じない一方的な代金決定が挙げられています。後者は今回の改正で新しく入ったものです。「もう一度作り直して、料金は据え置きで」が常態化しているなら、条文に触れていないか確かめる価値があります。

5. どこまで渡し、どこで止めるか

提案先の選定、価格・条件の決定、競合比較の判断軸、最終確認は社内に残す。構成案は社内で決めて渡す。文章化・図表化・体裁の統一、過去資料からの転記は外に出せる。

ここまでを踏まえて、提案書づくりのどこを外に出し、どこを残すかを整理します。

外に出せるのは、形にする工程です。構成に沿った文章化、図表の作成、体裁の統一、過去資料からの転記。これらは渡す材料が揃っていれば成立します。

社内に残すべきは、判断が入る工程と、出どころになる情報です。どの客先に何を提案するかの選定、価格の決め方、競合との比較軸、過去の失注理由。これらは外に出した瞬間に二つの問題が起きます。

一つは、前述の第636条です。判断を外注先に委ねておきながら、こちらの指図が不十分だったために生じたずれは、相手に問えません。

もう一つは、営業秘密としての保護です。不正競争防止法第2条第6項は、営業秘密を「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」と定義しています。経済産業省の「営業秘密管理指針」は、この秘密管理性について、保有者が主観的に秘密と考えているだけでは足りず、秘密管理の意思が措置によって明確に示され、従業員等の認識可能性が確保される必要がある、と説明しています。管理の措置をとらずに渡した情報は、後から営業秘密だと主張することが難しくなります。

経済産業省の「秘密情報の保護ハンドブック」も、取引先に向けた対策として、提供する情報の範囲を取引に必要な最小限に限ること、開示する前に秘密保持契約を結んでおくこと、目的外使用を禁じること、契約終了時の返還・消去を定めること、再委託には事前の書面承諾を求めることを挙げています。

実務としては、こう置くのが現実的です。

作業扱い
提案先の選定・提案の方向づけ社内に残す
価格・条件の決定社内に残す
競合比較の判断軸、失注理由の分析社内に残す
構成案の作成社内で決め、外に渡す
文章化・図表化・体裁の統一外に出せる
過去資料からの転記・更新外に出せる(渡す範囲を限定する)
最終確認社内に残す

6. 外注先を選ぶ前に、頼む範囲を決める

提案書の作成代行を探している時点で、多くの場合、本当の課題は「書く人がいない」ではありません。誰がどこまで判断し、何を渡せば形になるのかが決まっていないことです。これが決まっていないと、どの外注先に頼んでも、往復の回数が増えて結局は社内の時間を使います。

逆に、頼む範囲が決まっていれば、外に出せるのは提案書づくりだけではありません。リストの整備、初回接触、日程調整、商談後の記録。どれも、判断の部分を社内に置いたまま手を借りられる作業です。

当社では、観光事業をはじめとする各分野で、この工程の切り分けから入る営業代行をご提供しています。どこまでを社内に残すかの整理からご相談いただけます。

→ 観光事業マネジメント・営業代行


出典

  • 民法(明治29年法律第89号)第632条、第636条、第637条、第643条、第644条、第648条、第656条/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
  • 著作権法(昭和45年法律第48号)第15条、第27条、第28条、第59条、第61条/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048
  • 文化庁著作権課「著作権テキスト 令和7年度版」 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/pdf/94283401_01.pdf
  • 文化庁委託事業「誰でもできる著作権契約マニュアル」 https://pf.bunka.go.jp/chosaku/chosakuken/keiyaku_intro/chosakukenkeiyaku_manual.pdf
  • 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(昭和31年法律第120号、最終改正 令和7年法律第41号、2026年1月1日施行)第2条、第3条、第4条、第5条、第6条、第7条/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/331AC0000000120
  • 公正取引委員会「取適法の概要」 https://www.jftc.go.jp/toriteki/toritekigaiyo/gaiyo.html
  • 公正取引委員会「委託事業者の義務」 https://www.jftc.go.jp/toriteki/toritekigaiyo/oyagimu.html
  • 公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法テキスト(令和7年11月)」 https://www.jftc.go.jp/toriteki/r7text.pdf
  • 公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」Q43 https://www.jftc.go.jp/toriteki/toriteki_qa.html
  • 不正競争防止法(平成5年法律第47号)第2条第6項/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/405AC0000000047
  • 経済産業省「営業秘密管理指針」(平成15年1月30日策定、令和7年3月31日改訂) https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/guideline/r7ts.pdf
  • 経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック」(平成28年2月、令和6年2月改訂)および参考資料2「各種契約書等の参考例」 https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/handbook/full.pdf / https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/handbook/reference2.pdf

※本記事は法令の一般的な説明であり、個別の契約や取引への当てはめについては、弁護士または公正取引委員会・中小企業庁の相談窓口にご確認ください。

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